猫は自分から人のそばに来た — ちょっとだけ家畜化された動物
更新日 2026年10月犬・猫・ペット

犬は人と協力するパートナーとして家畜化されてきました。一方、猫は少し事情が違います。猫はどうやら、自分から人のそばにやってきた動物のようなのです。
祖先はリビアヤマネコ
世界中のイエネコの遺伝子を調べた研究から、猫の祖先は中東などにすむリビアヤマネコだとわかっています。今から1万年ほど前、中東の「肥沃な三日月地帯」と呼ばれる地域で農耕が始まったころに、人との関係が始まったと考えられています。
ネズミが結んだ縁
農耕が始まると、人は収穫した穀物を蓄えるようになりました。そこにネズミが集まり、そのネズミを狙ってヤマネコがやってきます。人にとってはネズミを退治してくれるありがたい存在で、ヤマネコにとっては獲物が豊富な狩り場です。人を怖がりすぎない個体ほど集落でうまく暮らせたため、少しずつ人に慣れた猫が増えていったと考えられます。
これは家畜化の3つの道のうち、動物のほうから近づいてきた「片利共生の道」の代表例です。
9500年前、人と一緒に埋葬された猫
地中海のキプロス島では、約9500年前の人の墓のすぐそばに、猫が埋葬されているのが見つかりました。キプロスにはもともとヤマネコはいないため、人が船で連れてきたと考えられます。この時代にはすでに、人と猫のあいだに特別な関係があったのかもしれません。
見た目はあまり変わっていない
犬が犬種によってまったく違う姿になったのに対し、多くのイエネコは今でも祖先のリビアヤマネコとよく似た体つきをしています。猫は人の手で繁殖を管理されるようになったのが比較的最近で、長いあいだ自分で相手を選んで子を産んできました。そのため猫は、家畜化の程度が浅い「半分だけ家畜化された動物」とも言われます。
2014年のイエネコのゲノム研究でも、野生のヤマネコと比べて変化している遺伝子の領域は、犬などと比べると少なめでした。その中には、記憶や恐怖、ごほうびによる学習に関わる遺伝子が含まれていたと報告されています。
「ニャー」は人に向けた言葉
大人の猫どうしは、実はあまり「ニャー」と鳴き合いません。子猫が母猫を呼ぶときの鳴き声を、大人になってからは主に人に向けて使っていると考えられています。人と暮らすなかで、子どものころのコミュニケーションを大人になっても使い続けるようになった。これも一種のネオテニー(子どもの特徴が大人に残ること)と言えそうです。
参考にした主な資料
- Driscoll et al. (2007) The Near Eastern origin of cat domestication. Science
- Vigne et al. (2004) Early taming of the cat in Cyprus. Science
- Montague et al. (2014) Comparative analysis of the domestic cat genome. PNAS