野生化した動物は、もう一度家畜に戻れるのか
更新日 2026年10月野生化と再家畜化

人の手を離れて野生化した動物は、もう一度人のもとに戻れるのでしょうか。実例を見ていくと、その答えは「野生化がどれだけ長く、深く進んだか」によって変わることがわかってきます。
野生馬はもう一度「馬」になれる
アメリカでは、増えすぎた野生馬(ムスタング)を国が保護・捕獲し、一般の人に引き取ってもらうプログラムが続いています。引き取られた馬は調教を受けて、乗用馬や牧場の仕事馬として暮らすようになります。調教の腕を競うイベントまで開かれているほどです。
ニュージーランドのカイマナワ馬や、オーストラリアの野生馬ブランビーでも、捕獲した馬を乗用馬として再び人のもとで暮らさせる取り組みがあります。野生化してから数百年ほどの馬は、遺伝的にはまだ家畜の馬とほとんど変わらないため、人との暮らしに戻りやすいのです。
ニワトリの祖先で「家畜化をやり直す」実験
ニワトリの野生の祖先は、東南アジアなどにすむセキショクヤケイという鳥です。スウェーデンのリンショーピン大学の研究グループは、このセキショクヤケイを、人をあまり怖がらない個体と、とても怖がる個体に分けて、世代を重ねて選んでいく実験を行いました。
すると数世代のうちに、人を怖がらない系統では体が大きくなる、卵が大きくなる、ストレスへの反応が変わるなど、家畜のニワトリに近い方向の変化がいくつも現れました。キツネの実験と同じように、人への恐怖心を選ぶだけで、ほかの性質まで一緒に変わったのです。
犬と猫は「行ったり来たり」が日常
野良犬や野良猫は、家畜が野生化した存在とも言えます。それでも、子どものうちに人に慣れる機会があれば、家庭で暮らせるようになることが多いです。犬や猫には、生まれてから数週間〜数か月の社会化期と呼ばれる、新しいものを受け入れやすい時期があり、この時期に人と触れ合えるかどうかが大きく影響します。
特に猫は、家で暮らす猫と外で暮らす猫のあいだで今も行き来があり、家畜と野生の境目がとてもあいまいな動物です(猫の記事も参照)。
ディンゴは戻りにくい
一方、数千年にわたって野生で暮らしてきたディンゴは、子どものころから人に育てられても家庭犬のようにはなりにくいと言われます。野生化が長く続き、野生の暮らしに合わせた性質が積み重なるほど、再び家畜に戻ることは難しくなるのです。
参考にした主な資料
- Agnvall, Jensen et al. (2012〜) Red junglefowl selected for low fear of humans の一連の研究(リンショーピン大学)
- Henriksen et al. (2018) Evolutionary Applications
- 米国土地管理局(BLM)野生馬・野生ロバ引き取りプログラム資料